ガソリン車からBEV(電気自動車)へと移行する現在、注目が高まっているのがエンジンとモーターの両方のいいとこ取りのプラグインハイブリッド(PHEV)です。メルセデスAMGが投入したPHEVは、“ 63S E パフォーマンス”と呼ばれ、現在6モデルが販売されています。今回はF1由来の電動技術を投入した“ 63S E パフォーマンス”について深掘りします。
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ターボエンジンに高出力モーターを組み合わせたハイパフォーマンスモデル

▲システム最大出力680psを発生する2LターボエンジンのPHEVシステム
ライターの萩原です。ガソリン価格の高騰で、電気自動車をはじめとした電動車の注目が高まっています。その中でとくに注目を集めているのがエンジンでもモーターでも走行可能なプラグインハイブリッド(PHEV)車で、メルセデスでもPHEVを多く用意しています。
メルセデス・ベンツの車名はCクラスやGクラス、EQSといったモデル区分に加え、220や320、580のように続く数字2〜3ケタで搭載しているパワートレインを示します。これはメルセデス・ベンツの車種だけでなく、メルセデスAMG、メルセデスマイバッハも共通です。
なかでもメルセデスAMGは43、53、55、63という二桁の数字を使用し、エンジン車の時は数字が大きくなるほど出力の大きな大排気量エンジンを搭載しています。詳しくは「35、43、45、53、63 …メルセデスAMGとメルセデスマイバッハのグレード名の法則とは?」を参照ください。
ところで最近ではメルセデスAMGのモデルの中に、「63S E パフォーマンス」と呼ばれるモデルがラインアップされているのはご存じでしょうか。

▲フロントフェンダーにE パフォーマンスのエンブレムが貼られている
63S E パフォーマンスの歴史を振り返りますと。
2023年10月にベストセラーモデルCクラスセダンのスポーツモデルとして「メルセデスAMG C63S E パフォーマンス」を導入したのを皮切りに、翌月にはAMG S63 E パフォーマンス、12月にはAMG C63S E パフォーマンス ステーションワゴンが次々に登場しました。翌2024年1月にはAMG GT 63S E パフォーマンス、3月にはAMG GLC 63S E パフォーマンス 、2025年2月にはAMG GT 63S E パフォーマンス クーペと続々配備。
そこで今回はメルセデスAMGがラインアップを拡充している63S E パフォーマンスについて紹介します。
現在、6モデルが販売されている63S E パフォーマンスですが、これはAMGが手掛けたプラグインハイブリッド(PHEV)システムを搭載したモデルです。モデルごとに搭載しているエンジンの排気量は異なりますが、フロントにエンジン。リアにバッテリーとモーターを搭載。さらにF1テクノロジーを採用した駆動システムを採用したハイパフォーマンスモデルというのが特徴です。

▲C63S E パフォーマンスのフロントスタイル
今回は、車両本体価格1660万円のメルセデスAMG C63S E パフォーマンスセダンを取材しましたので、こちらを代表モデルとして紹介していきます。
メルセデスAMG C63S E パフォーマンスセダンに搭載されているパワートレインは、システム最大出力680ps(500kW)、最大トルク1020N・mを発生するPHEVシステムに、AMG 自社開発の高性能バッテリー(6.1kWh)やAMG のパフォーマンス志向連続トルク可変配分四輪駆動システムの4MATIC+を組み合わせたもの。

▲C63S E パフォーマンスのリアスタイル。リアフェンダーがワイドになり全幅は1900mm
最高出力476ps(350kW)、最大トルク545Nmを発生する2L直列4気筒ターボエンジンは、F1由来の技術であるエレクトリック・エグゾーストガスターボチャージャーを採用。これは、排気ガスを利用してより多くの空気をエンジンに送り込むターボチャージャーの排気側のタービンホイールと、吸気側のコンプレッサーホイールの間に厚さ4cmの電気モーターを組み込み、ターボチャージャーの軸に一体化されています。
これにより、モーターが電子制御でコンプレッサーホイールを加速。発進時から全エンジンの回転域にわたって、レスポンスの速さが大きく改善されるのです。このターボチャージャーは、搭載された400V電気システムを電源として最大15万回転まで動作します。

▲トランクリッドには赤をアクセントカラーにしたエンブレムを装着
最高出力150kW、最大トルク320Nmを発生する電気モーターは前後の重量バランスを考えて、リアアクスルに搭載。電動シフト式2速トランスミッションおよび電子制御式リミテッド・スリップ・デフとともにコンパクトなエレクトリックドライブユニット(EDU)にまとめられた、P3 ハイブリッド(変速機内あるいは変速機よりも下流に電気モーターを置く)と呼ばれるレイアウトを採用しています。

▲C63S E パフォーマンスのインテリア
C63S E パフォーマンスセダンのハイパワーな電動ユニットのために、開発されたのが、AMG ハイパフォーマンスバッテリー(以下、HPB)です。このバッテリーの開発はメルセデスAMG ペトロナスF1チームが使用しているF1 ハイブリッドレーシングマシンのきわめて苛酷な条件下で実証済みの先進テクノロジーを元に進められてきました。
AMG HPBは、高出力を頻繁に繰り返し発生できる能力と軽量構造とを兼ね備えることで、クルマの総合的なパフォーマンスを高めています。さらに、充電速度が速いことと出力密度が高いことも特長で、これにより、アップダウンのあるワインディングを高速走行する場面などでは、上りでただちに100%のパワーを引き出すことができる一方、下りでは強力な回生ブレーキが実現できます。
このAMG 400V バッテリーが高性能を実現するベースとなっているのが、革新的な直接冷却方式を採用したことです。非導電性の液体をベースとする高度な冷却液を循環させて560個のセルすべてを個別に直接冷却する方式を初めて採用。
バッテリー温度は充放電の頻度に関係なく、平均45℃という最適な動作温度範囲内に常に保たれるように設計されています。また高速走行時などバッテリーが高温となる過負荷時には、直接冷却によって温度を下げる保護メカニズムが採用されています。

▲バッテリーの残量をディスプレイで確認できる
通常のシステムでは、回生ブレーキのレベルが高くなるとバッテリーの温度が大きく上昇することから、回生量を制限しなければならないことが難点となります。しかし C63S E パフォーマンスセダンに搭載された高性能バッテリーは、直接冷却により約45℃の最適な温度範囲に常に保たれることで、回生ブレーキについても最適化が可能となりました。
回生ブレーキは、アクセルから足を離す、すなわちブレーキペダルを踏まない空走状態でスタートします。このときバッテリーが充電されることで大きな制動力が発生し車両は減速できるので、摩擦ブレーキによるブレーキパッドの摩耗が軽減されます。また、回生ブレーキの強さや交通状況によっては、摩擦ブレーキをまったく使わずに制動できる場合もあります。
回生ブレーキの強さは4段階となっていて、右側のAMGドライブコントロールスイッチで切り替えることができます。これは、「Slippery」モード以外のすべてのドライブモードに適用されるもので、選択されているドライブモードに応じて異なる設定でエネルギー回収が可能です。

▲21インチホイールの中には大容量のブレーキシステムを収める
C63S E パフォーマンスセダンの駆動方式は、Cクラスでは初めて、前後トルク配分の連続可変が可能な4MATIC+を採用、通常走行時はリア駆動を基本とし、走行状況やドライバーの操作に応じて前後トルク配分を0:100~50:50の間で連続可変します。前後固定式に比べ更に最適なトラクションを確保する事ができ、ドライ、ウエット、スノーなどいかなる路面状況でも走行安定性、安全性を高めています。
さらに、C63S E パフォーマンスセダンには後輪操舵システム「リア・アクスルステアリング」を標準装備。約100km/h以下では、リアホイールをフロントホイールとは逆方向に最大約2.5度転舵します。これにより日常の走行シーンや、駐車する際には回転半径が小さくなるため、クルマが扱いやすくなります。

▲充電ポートは普通充電のみ
メルセデスAMG S E パフォーマンスの各モデルは、F1由来の電動技術をはじめ、AMGが開発した高性能バッテリーなど最新のテクノロジーが満載の他に類を見ないPHEVということがわかっていただけたでしょうか。興味を持たれた方は、宮園輸入車販売株式会社のショールームに足を運んで頂き、実際にその高いパフォーマンスを感じていただきたいと思います。
(萩原文博)
萩原文博(はぎはら・ふみひろ)
AJAJ会員。大学在学中から中古車情報誌の編集部にアルバイトで参加。卒業後は編集者として企画立案し、ページ製作を行う。2006年からフリーランスエディター/ライターとして独立。2015年からは、新車カタログ本製作を担当し年間200台以上の新車試乗・撮影を行っている。
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