2025.08.07

メルセデス・ベンツ正規ディーラーの「サービス・アドバイザー」ってどんな仕事?

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メルセデス・ベンツの正規ディーラーではオーナーが気持ち良くカーライフを楽しめるよう、多くのスタッフがさまざまな業務を担っています。その仕事はユーザーと直に接するものからバックオフィスまで多岐にわたります。今回ご紹介するのは「サービス・アドバイザー」という仕事。正規ディーラーでメルセデス・ベンツのクルマを購入すると、その後のカーライフで最も多く接する機会のある仕事です。

 

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お客様の「気持ちを直す」のがサービス・アドバイザーの役割

自動車業界に入ってからというもの、やけにクルマのオーナーと販売店の取材が多い高橋です。

 

「クルマをご購入いただいてからがお客様との本当のお付き合い」

 

新車・中古車を問わず自動車販売店に話を聞くと、この言葉をよく耳にします。たとえばみなさんがコンビニで水やおにぎりを買った場合、お会計を終えた時点で店との関係はほぼ終了します。洋服を買ったりレストランで食事をした時も同じ。もちろん気に入ったお店に何度も通うことはありますが、買い物は基本的に1回で完結します。

 

しかし、クルマはこれらの買い物とは根本的に異なります。

 

クルマを買うと、定期点検や車検でユーザーのクルマを預かるシーンが発生します。また、安心してクルマに乗り続けるためには不具合が発生した際にきちんとメンテンナスを行い、万全の状態でクルマに乗り続けられるよう努めなければなりません。つまりクルマを買った後もお店との関係は終わらず、続いていくのです。

 

メルセデス・ベンツの正規ディーラーに配置される「サービス・アドバイザー」はオーナーと販売店の接点となる仕事。とはいえ、サービスアドバイザーが具体的にどんな仕事をするかご存じない方も多いことでしょう。そこで今回は、MB国際認定サービスアドバイザーの資格をもつ、メルセデス・ベンツ中野の秋元幸介さんと田口裕生さんにお話をうかがいました。

秋元さん(以下、秋元):サービス・アドバイザーは、お客様が整備や点検などでおクルマをお持ちいただいた際に、お客様からおクルマの状況や気になる点をヒアリングするのが役割です。

▲秋元幸介:2011年にメカニックとして宮園輸入車販売に新卒入社。メルセデス・ベンツの知識を習得後、2018年に希望してサービス・アドバイザーに転身。2023年にMB国際認定サービス・アドバイザーの資格を取得

田口さん(以下、田口):サービス・アドバイザーの仕事は、お客様がご自身のクルマに対して感じていることをきちんとヒアリングしメカニックに「伝える」ことです。お客様のおクルマを直すのはメカニックの仕事です。私たちの仕事は、不安を覚えて来店されたお客様に寄り添い、「気持ちを直す」のが役割だと考えています。

▲田口裕生:前職を退職後、知人から紹介されて自動車業界に。アシスタントを2年経験した後、2009年にMB国際認定サービス・アドバイザーの資格を取得

サービス・アドバイザーの多くはメカニック経験者。自身の経験を活かしながらお客様の話を聞き、状況を的確に把握してメカニックに伝えます。しかし、田口さんはまったくの異業種からサービス・アドバイザーになったとか。整備に関する知識がない状態でサービス・アドバイザーになることに不安はなかったのでしょうか。

 

田口:実際、不安しかありませんでした(笑)。当初は「私には無理です」と断ったくらいですから。

 

田口さんがサービス・アドバイザーになることを勧められた時代は、まだ女性のサービス・アドバイザーがいなかったそう。そんななかで機械のことをわからない自分がこの職種を目指すのは到底不可能だと思ったのも無理はありません。それでもサービス・アドバイザーになったのは、当時の上司からの言葉が大きかったそうです。

 

田口:先ほどの「サービス・アドバイザーは伝えるのが仕事」というのは、上司の言葉なんです。お店にはクルマに精通したメカニックがいるのだから、彼らを信頼していれば大丈夫。だから君はお客様にしっかり向き合って、お客様が感じていること、何に困っているかを正しくメカニックに伝えてほしい。そして、整備が終わったら今度はメカニックの言葉をお客様に伝えて、安心してメルセデス・ベンツのクルマに乗り続けられてもらう。お客様とメカニックの橋渡しをしてほしい、と言われたんです。

 

なるほど、サービス・アドバイザーとは顧客とメカニックの橋渡し役。

 

秋元:私はメカニック出身ですが、サービス・アドバイザーになってからメカニックとの連携がいかに大切かを痛感させられる出来事がありました。お客様からうかがった症状と自分の経験から私は不具合箇所を推測し、ここを修理してくれとメカニックに伝えました。しかし私が伝えた箇所を修理しても症状が改善しない。結果的に原因はまったく別のところにあったんです。

 

この時、私は痛感しました。

 

いくら現場経験があったとしても、現場に任せることが大切なのだと。最新のクルマを熟知したプロフェッショナルは彼らなのですから。

 

最新のクルマのことも熟知したメカニックを信頼し、彼らが100%の力を発揮できるようにオーナーからクルマの症状を聞き出す。これもサービス・アドバイザーの大切な仕事なんですね。

スリーポインテッドスターを輝かせるのは私たち

▲お客様の入庫情報は担当セールスとも連携する

正規ディーラーにはクルマの販売を担当するセールス、そしてお客様のクルマを整備するメカニックがいます。その中でサービス・アドバイザーの役割をどのように考えているのでしょう。

 

田口:私はお客様にメルセデス・ベンツというブランドを今以上に好きになってもらうことがサービス・アドバイザーの大切な役割だと考えています。そのためにはお客様一人ひとりに合った接客を行うことが大切です。たとえばお急ぎのお客様と接する際には短い時間でお困りごとをうかがうようにしますし、クルマが好きでメカニカルな部分にも興味を持っている方にはデータをお見せしながらじっくりご説明する、といった具合です。

 

メルセデス・ベンツには女性オーナーもたくさんいます。メカニカルなことに詳しくないオーナーだと、不具合が生じた場合にどうしたらいいかわからなくて不安になるもの。そんな時にお客様の気持に寄り添い、平易な言葉で今の状況や対処法を説明する。きっとオーナーにとって大きな安心につながるはずです。

 

もうひとつ気になるのは、メルセデス・ベンツというブランドの特徴。メルセデス・ベンツは取り扱うモデルが多く、ひとつのモデルの中にいくつものグレードがあります。サービス・アドバイザーとして、どのようにクルマの知識を身につけているのでしょうか。

 

田口:メルセデス・ベンツは研修制度が充実しているので、新しいクルマが出た時はトレーニングを必ず受けます。私はメカニック出身ではないのでいろいろな知識を身につけるのは大変ですが、最低限のポイントは押さえるように頑張っています。

 

秋元:私は実践主義です。研修はもちろん、日々の仕事の中でも新しいクルマのことを理解するよう意識しています。時間がある時は試乗車にも乗ってみて、これはこういう特徴があるのかと勉強していますね。

▲オーナーが感じている違和感を的確にメカニックに伝える。そのためには普段からのコミュニケーションも重要

おふたりはメルセデス・ベンツが定める国際資格「国際認定サービス・アドバイザー」を取得。この資格を取得すれば、世界中のメルセデス・ベンツで「サービスのプロフェッショナル」として認められるものです。

 

秋元:私は2年前にこの資格を取得しました。資格を取得したことで身の引き締まる思いを感じ、一層責任を持って仕事に取り組まなければならないと感じています。

 

田口:なぜこの仕事を続けているのだろうと考えた時、私は「人が好き」だからと感じます。私がお客様と最初に接する時、お客様は不安な気持ちでいるはずです。私たちサービス・アドバイザーがお客様の話をうかがい、無事にクルマが直ってお客様に安心していただき、「メルセデス・ベンツに乗っていてよかった。あなたがいるお店でクルマを買ってよかった」と言っていただけるような仕事ができたら嬉しいですね。

 

セールススタッフがオーナーのメルセデスライフのきっかけを作り、メカニックがオーナーのクルマを万全な状態にする仕事だとしたら、サービス・アドバイザーはオーナーのカーライフをさまざまな面からサポートする仕事と言えます。

 

Together we make the star shine.(お客様のメルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターを輝かせるのは私たち)

 

これは田口さんがサービス・アドバイザーの研修で学んだ言葉だそうです。

 

オーナーのカーライフを楽しいものにしていくために支えていくのがサービス・アドバイザーの役割である。全国のメルセデス・ベンツディーラーにいるサービススタッフがこの言葉を胸に刻んでいるはずです。

 

田口:街でメルセデス・ベンツのクルマを見かけたらカッコいいなと思ってほしいですし、メルセデス・ベンツに乗っている人にもカッコよく乗ってほしいですからね。そういうファンを増やしていくことができたら嬉しいです。

 

(高橋 満)

プロフィール

高橋満(たかはし・みつる)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経て1999年にエディター/ライターとして独立し、自動車、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。最近はゴルフに興味が出てきていて(まだデビュー前ですが)、Eクラスステーションワゴンのようなラゲッジが広くて快適に移動できるクルマに興味津々。

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