突然ですが、メルセデス・ベンツの中でも人気のボディカラーである「ホワイト」ですが、実は微妙に青っぽかったり、黄味がかっていたりと色調が異なる白が多数ありまして、実際にその種類がいくつあるかご存知でしょうか?そんな疑問を携えて向かうは、メルセデス・ベンツ中野 所沢BPセンター。塗装のプロにうかがいました。
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過去もっともヒヤッとしたのは、4WD車を雪の八甲田山で振り回してスピンしたとき。そんな熊山です。
その時はさいわい雪の壁にぶつかり無事だったのですが、もしもボディが損傷していたならお世話になったのが板金修理工場です。メルセデス・ベンツ正規ディーラーの宮園輸入車販売のネットワークでは、「メルセデス・ベンツ中野 所沢BPセンター」という板金修理工場を擁し日々の事故車両の対応をおこなっています。
BPセンターのBODY部門である板金工程で何をしているのかをお送りしたのが前編「メルセデス・ベンツで修理が一番多い場所はどこ?」(リンク挿入)でした。続く後編はPAINT部門である塗装工程をフィーチャー。
誰もが気になる「メルセデスのホワイトはいったい何種類あるのか?」という疑問を携えてお届けします。
▲メルセデス・ベンツ中野 所沢BPセンター。しつこいようですが中野ではなく所沢にあります
今回お話をうかがったのは、メルセデス・ベンツ中野 BPセンター(所沢)の牛島政彦さん。新卒で入社以来30年、現在まで塗装一筋で現場に立ち続けてきました。BPセンターの中でも塗装を代表する存在です。
▲メルセデス・ベンツ中野 所沢BPセンター所長代理の牛島政彦さん
牛島さん(以下、牛島):塗装作業は、いきなり色を吹くところから始まるわけではありません。まず、板金工程を終えたパネルが塗装工程へと引き渡されますが、塗装の前に下準備が必要になります。ヤスリで表面を整え、パテの上にサフェーサーと呼ばれる下地塗料を吹く。
例えるなら、天ぷらを揚げる前、打ち粉をまぶしておくような工程です。これを怠ると、どれだけ丁寧に色を塗っても仕上がりは安定しないんです。
▲板金工程からまわってきたバンパー。凹みや傷が修復されています
塗装と聞くと、スプレーガンでムラなく色を吹く技術が一番難しいと思われがちですが、牛島さんは迷いなくこう言います。
牛島:一番難しいのは、調色ですね。色を塗る前の”色をつくる”工程こそが、塗装の要です。
メルセデス・ベンツには、すべてのボディカラーに調色レシピが用意されています。決められた配合比率で塗料を混ぜれば、理論上は同じ色ができるはずです。しかし、実際の現場ではそう単純にはいきません。紫外線や熱による退色、屋外保管か屋内保管かといった環境の違い、さらには年代やロットの差によって、同じカラーナンバーでもクルマ一台一台の色味は微妙に異なります。
▲塗料を作る前に、まずは無傷のボディからボディカラーをチェック。しかし日焼けや劣化の具合により同じクルマでも場所によって微妙に色合いが違う
牛島:レシピはありますけど、正直、当てにならないことも多いですね。最後に頼るのは、長年の経験で培われる目です。光の当たり方を変え、角度を変え、現車と何度も見比べながら、少しずつ色を追い込んでいきます。
なかでもホワイトは、塗装担当者にとって厄介な色だとか。今回、中野の拠点で並べた白のカラーサンプルは実に8種類以上(2026年1月現在)。青みのある白、黄み寄りの白、パールを含んだ白など、同じホワイトでも印象は大きく異なります。また、白は退色の影響を受けやすく、光の条件によって見え方が大きく変わるため、調色の難易度が非常に高いのです。
▲こちらが取材当時のホワイトラインナップ。すべてのカラー名を当てられたらあなたはメルセデス博士かも
いっそ黒などのダークカラーの方が、まだ合わせやすいと感じる場面もあるそうです。とはいえ、黒も黒で奥が深い。メタリックやパールが入れば、光の反射によって同じ色番号でもまったく違って見えることがあります。
▲多くの塗料からレシピをもとにいったん調合。しかしそのままでは使えません
▲さらに経験をもとに調色作業。色を混ぜ合わせては吹き付けて、実際の色に近づけます
▲壁に貼られた試行錯誤の後
牛島:調色を終えたら、マスキング作業に移ります。塗りたくない部分を丁寧に覆い、色が入り込まないようにする工程です。このマスキングは工程の中では、意外と楽しい作業なんですうよね。クルマごとに形状が異なるから、貼り方に応用と工夫が求められます。どこから塗料がまわりこみそうか考えながらマスキングし、塗装後にそれを剥がした瞬間、きれいに仕上がっていると、思わず気持ちが高まりますね。
その塗装自体は、スプレーガンを使って行います。ベースコートで色を入れ、その上にクリアコートを重ねる。パール系や3コート塗装の場合は、さらに工程が増えます。塗装後はしっかりと乾燥させ、必要に応じて磨きの工程へ。磨きは調色ほど難しくはないものの、最終仕上げとして細心の注意が求められる作業です。
▲意外と楽しいというマスキング作業
やカーボンボディなど、構造や素材の特性上、修理が難しいケースもあります。特にカーボンは、一度破損すると基本的に修理ができません。
最後に牛島さんに、塗装の現場でやりがいを感じる瞬間について尋ねました。
牛島:直接お客様とお話しすることは少ないですが、ディーラーから「すごく喜んでいましたよ」と聞けたときは嬉しいですね。また、難しい色合わせがうまく決まり、仕上がったクルマを見たときにも、静かな達成感がありますね。
塗装は、ただ色を塗る仕事ではありません。新品のように戻すことを望むオーナーさんもいれば、長年乗ってきたクルマの「味」を残したいという方もいる。その意図を汲み取りながら、違和感のない仕上がりを目指すのが使命だと感じています。
▲こちらが塗装したてホヤホヤのドアパーツ。この後、組み立て工程を経てユーザーの元へと帰ります
前編で紹介した板金が「かたちを戻す」仕事だとすれば、塗装は「印象を戻す」仕事と言えるかもしれません。BPセンターでは、その両方が揃ってはじめて、一台のメルセデス・ベンツが本来の姿を取り戻すのでしょう。匠のみなさん、まいにちご苦労さまです!
(熊山 准)
熊山 准(くまやま・じゅん)
中古車情報誌『カーセンサー』(リクルート)編集部を経て、ライターとして独立。クルマに限らずおもちゃ、家電、ガジェットなどモノ全般が大好物。現在はライフワークの夕焼けハントが嵩じて東京と沖縄で二拠点生活中。いま欲しいメルセデス車はCLAシューティングブレーク
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