2025.10.30

【インタビュー後編】新社長・川村行治が描く「これからの輸入車販売店の提供価値」

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2025年7月に宮園輸入車販売株式会社の新社長に就任した川村行治氏。インタビュー記事前編では、そのキャリアや人物像を掘り下げてご紹介しました。後編では、メルセデス・ベンツというブランドへの思い、輸入車業界が直面する変化、そしてこれからの宮園輸入車販売が目指す姿についてうかがいます。

 

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“メルセデス・ベンツ”ブランドを扱う責任

──まず、宮園輸入車販売が長年取り扱っている「メルセデス・ベンツ」というブランドについて、どんな風にとらえていらっしゃいますか?

 

川村行治(以下、川村):メルセデス・ベンツは“クルマ”という概念を世界で最初に形にしたメーカーです。1886年にカール・ベンツが発明し特許を取得しました。同時に、数多くの特許技術を持ちながらも独占はせず、公開して、業界全体の発展をリードしてきました。そのうえで、とりわけ彼らの『最善か無か』というメッセージは、まさにブランドのあり方を示した象徴的なタグラインだと思います。

 

──ドイツのミュージアムにも行かれたそうですね。

 

川村:はい。出張の合間で初めて訪れるチャンスがあり行ってきました。とても行ってよかった素敵なミュージアムです。クルマの誕生から現代までの歴史を順に追体験するような展示構成でした。

 

彼らも起業当初は「新しい概念」を商品としようする野心的な現代のベンチャー企業のように、時代に翻弄されながら試行錯誤しクルマを作っていた。透けて見えるその姿勢や情熱、等身大の姿に私の前職の起業経験もあいまって、とても共感しましたし、そのことは現代のメルセデス・ベンツのもつ大きなイメージである“ラグジュアリー”とはまた違った人間味ある魅力として興味深く感じました。

 

──そんなブランドを扱う責任については?

 

川村:やはり“最高級の商品を扱う”という自覚は常に持たなければいけません。しかも世の中にはラグジュアリーな商品や嗜好品は沢山ありますが、少し違うのはクルマは数万点のパーツからなる「機械」であることです。

 

オーナー、同乗者を乗せ、様々な気候や路面コンディションの中でも、安全に快適に毎日走り続ける機能であることが大前提となります。そのためには、定期的な点検やメンテナンスが欠かせません。メルセデス・ベンツのパフォーマンスと世界観を十分に感じていただくために、社員一同ふさわしいサービスを提供しようと日々努力しています。それこそが我々、販売店がお客様に提供できる大きな価値の中心だと思っています。

100年に一度の自動車業界大変革を前に

▲宮園輸入車販売 代表取締役社長・川村行治(かわむら・ゆきはる)。国産車の広告ハウスエージェンシー、大手広告代理店を経て起業。2020年50歳で家業のひとつである同社にジョイン。創業者の川村利治は祖父にあたる

──ガソリンからハイブリッド、EVへ。また国内市場も縮小傾向など、激変する自動車業界ですが、なかでもご自身がいる現在の輸入車業界全体はどのように見ていますか?

 

川村:高度経済成長時の「マイカー」の定着から、マーケットが成熟していく過程で、個性を表現する手段としても様々な輸入車が販売され親しまれてきました。昨今の人口減少や都市部へ人口が偏る中で、デジタル由来の高機能化、レンタカーやカーシェアなど合理性を求めた“所有”から“利用”へのシフトなど、CASE※の文脈でメルセデス・ベンツをはじめ輸入車は進化・変化を確実に進めています。また、「より私だけの特別なもの」への期待に答えるような高級志向・パフォーマンス志向への提案が進むと思いますし、ビスポーク=オーダーメイドに近い方向にも進むのかと感じます。

 

※メルセデス・ベンツが2016年に提唱した、未来のクルマに必要なキーワードを集約した造語。Connected(通信)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング/サービス)、Electric(電動化)からなる。

 

──そもそものクルマの値上がりにくわえ、円安の影響で車両本体価格が高騰しています。その影響でついてこられないユーザーもいらっしゃいますよね。

 

川村:私が子どもの頃は、当時は外国車も少ないこともありますが、メルセデス・ベンツは今よりももっと高嶺の花の存在だったような気がします。一方でここ30年ほどは様々なお求めやすいモデルも投入され、メルセデス・ベンツオーナーの輪がずいぶん広がりました。現在はすべての車両が高機能化する中で、以前よりお買い求めにくいとおっしゃられる方も居られることは事実です。しかしながら、是非ご相談いただけたらと思います。できるだけご要望に沿ったご提案をさせていただきます。

 

──EQをはじめとするEVについてはどうとらえていますか?

 

川村:100年に一度の自動車業界の大きな改革の時期で、BEVはその急先鋒であり象徴です。ただ、充電インフラなど課題も多い。進んでは戻り、また進む。そうやって少しずつ定着、普及していくでしょう。定着には時間はかかりますが、今後魅力的な車両も増えていくことと思いますし避けては通れない道だと思います。

 

時代にあわせて宮園輸入車販売も変わってゆく

▲プライベートでは大排気量バイクも駆るエンスージアストです

──この激動のさなか、販売店の役割はこれからどう変わっていくと思いますか?

 

川村:“クルマを販売する・整備する場所”から、それも含めてさらに“高機能のクルマをどう使うかを実感する”、“オーナーシップを刺激する“ことが機能として必要になるのではないでしょうか。もともと宮園グループはタクシー事業から始まった会社で、移動手段そのものを提供してきた歴史があります。その延長で、メルセデス・ベンツブランドを愛するお客様に、販売や整備だけでなく、所有以外の多様な新しい価値を提供できる余地があると思います。近い将来何かしらご提案できればと考えます。

 

──経営者として力を入れたいのはどんな部分ですか?

 

川村:先ほどもお話しましたが、「お客様に提供できた『価値』が我々の『喜び』であり『力』である」を経営理念としたように、お客様一人一人、プロセス含めふさわしい価値提供ができているかが重要と捉えています。また、人的資本経営を継承し、挑戦していく中でも社員一人一人が働きやすく、誇りに思える組織づくりができればと思います。

 

──実は宮園輸入車販売公式ブログの発起人も川村さんですし、社長ご自身、情報発信にも積極的ですよね。

 

川村:はい。地域の中小企業である我々ですが、お客様よりお褒めいただいたり、お叱りも受けながら、スタッフみんなが良いご提案・サービスができるよう日々奮闘しています。そのためには「宮園ってどんな会社なのか」をもっと知っていただきたいなと思っています。

 

お客様にとって我々は、メルセデス・ベンツの車を販売する、修理をする。という機能なのですが、それができるのも、お客様と相対するセールスやアドバイザーだけでなく、メカニックや本社スタッフなど裏で支える全てのスタッフが有機的に機能してこそです。このブログなどでおすすめする様々な提案や、それにともなう社員みんなの普段の横顔が見えることで、おクルマへの興味や、安心感に少しでもつながればとも思いますし、「よくやっているな、宮園に任せたい」と思っていただけたなら嬉しい限りです。また、このこともお客様へ提案できる価値のひとつだと思います。

 

──最後に、ブログ読者へのメッセージをお願いします。

 

川村:私は就任して間もないですが、事業運営上で大切なことと感じていることは、くどいようですが(笑)「お客様に提供できた価値こそが、私たちの喜びであり力なのだ」ということです。派手なことを一足飛びにやるのではなく、ひとつひとつの積み重ねを大切にしていきたいと思います。これからも宮園輸入車販売をどうぞよろしくお願いします。読んでいただいているこのブログも社員一同、皆さまに宮園の想いが届いたらと鋭意制作していますので、是非いろいろとご覧になって、お気軽にお近くの各店舗に足を運んでいただけたらうれしく思います。

 

メルセデス・ベンツというブランドへの敬意、業界全体の変化を冷静に見つめる視点、そして社員やユーザーへの思い。川村行治社長の言葉からは、新しい時代のリーダーとしての責任感と、着実に歩もうとする堅実さがにじみ出ていました。そんな新社長の新たな挑戦のひとつである当ブログも、みなさんにとって面白く役に立つ記事を提供すべく邁進してまいります!

 

(熊山准)

熊山准(くまやま・じゅん)

中古車情報誌『カーセンサー』(リクルート)編集部を経て、ライターとして独立。クルマに限らずおもちゃ、家電、ガジェットなどモノ全般が大好物。現在はライフワークの夕焼けハントが嵩じて東京と沖縄で二拠点生活中。いま気になっているメルセデスはCLAシューティングブレーク。

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