2025.06.05

リア・アクスルステアリングとは?──メルセデスの安定性と小回り性能の秘密

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メルセデス・ベンツの各モデルには、高い走行安定性と優れた乗り心地などを実現させるため、様々な電子デバイスが搭載されています。今回はその電子デバイスの中から、最小回転半径を小さくして取り回しを向上させる“リア・アクスルステアリング”を紹介します。

 

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大きなボディサイズのモデルでも取り回しを向上させる

▲全長5mを超えるSクラスのロングボディでも、最小回転半径は5.5mと取り回しが良い

ライターの萩原です。

 

2024年11月にマイナーチェンジを行った、メルセデス・ベンツEQS 450+に試乗しました。満充電時の走行可能距離が、日本国内で販売されている電気自動車の中で最長の759kmとなった同車。

 

高い静粛性、そしてマジックカーペットのような柔らかい乗り心地はラグジュアリーモデルそのものです。「なによりバッテリー容量が118.0kWhと大容量化されたこと」で、バッテリー残量を気にせず走行できました。

 

メルセデス・ベンツのモデル共通の高い走行安定性と抜群の乗り心地は、様々な電子デバイスが黒子のように働くことで実現されています。そんなデバイスの中でも、特に貢献度の高い、「リア・アクスルステアリング」の機能について解説します。

▲フロントホイールだけでなく、リアホイールも傾くため小回りが効く

リア・アクスルステアリングという機能は、2021年1月に日本市場に導入されたメルセデス・ベンツSクラスから搭載されています。Sクラスのような全長5mを超える大きな車種の4WD車は、FR(後輪駆動)車と比較すると、小回りが効きづらくなるというデメリットがあります。

 

しかし、現行型のSクラスでは、後輪操舵システム=リア・アクスルステアリングを採用することで、このデメリットを解消しました。それはリアサスペンションにモーターを取り付けて操舵を行う、つまり後輪も曲げるというデバイス。

▲S 500 4MATICロングのフロントスタイル

速度が約60km以下ではリアホイールをフロントホイールとは逆方向に最大4.5度傾けます。これにより日常の走行シーンや駐車する際の回転半径が小さくなるためクルマが扱いやすくなります。

 

その一方、約60km/hを超えるとリアホイールをフロントホイールと同じ方向に最大3度操舵することで、走行性能を向上させます。

▲同じ角度から撮影するとステアリングを切ったときにリアホイールが傾いているのがわかる

例えば、写真のメルセデス・ベンツS 500 4MATICロングの全長は5290mm、ホイールベースは3215mmと非常に大きなボディサイズですが、最小回転半径は5.5mとかなり小回りが効きます。Sクラスとほぼ同じボディサイズである全長5235mm、ホイールベース3125mmの国産プレミアムブランドのフラッグシップ4WDセダンの最小回転半径は5.9mなのでSクラスの取り回ししやすさが光ります。

 

ちなみに以下が、4つのモードにおけるリアホイールの操舵角度です。

 

駐車モード:フロントホイールと逆方向に最大4.5度

シティモード:フロントと逆方向に最大4.5度(約60km/h以下)

高速道路域での走行安定性:フロントホイールと同方向に最大2.5度(約120km/h以上)

ドライビングダイナミクス向上:フロントホイールと同方向または逆方向に最大3度まで(約60~120km/h)

 

これを見てもわかっていただけると思いますが、ボディサイズの大きなクルマでも従来のメルセデス・ベンツの美徳である小回り性能を犠牲にしないだけでなく、中速域での安定性やメリットも両立しているのです。またリア・アクスルステアリングは、どのステアリング角度が現在設定されているか、どの運転曲線がそこから生じるかは、メディアディスプレイで確認できます。

▲3125mmというロングホイールベースながらリア・アクスルステアリングの効果で取り回ししやすい

利用条件は、リア・アクスルステアリング及び360°カメラシステムが装備されている必要があります。前後・左右のタイヤサイズ・種類が異なる場合はサービスの利用はできません。

 

また、リア・アクスルステアリングが利用可能かどうかを確認するには、サービスチェッカー を使用するか、Mercedes me IDと車両をペアリングすればOKです。対象車両のリア・アクスルステアリングはコンピュータ制御されており、ライセンス満了日経過後は、本サービスを使用できなくなりますので、ライセンスの満了日にご注意ください。

 

高い走行安定性だけなく、駐車場などでの取り回しの良さを向上させるリア・アクスルステアリング。ボディサイズが大きなクルマは取り回ししにくいという常識を覆してしまう電子デバイスと言えます。その小回り性能は、ぜひ宮園輸入車販売の試乗車にてご体験ください。

 

(萩原文博)

萩原文博(はぎはら・ふみひろ)

AJAJ会員。大学在学中から中古車情報誌の編集部にアルバイトで参加。卒業後は編集者として企画立案し、ページ製作を行う。2006年からフリーランスエディター/ライターとして独立。2015年からは、新車カタログ本製作を担当し年間200台以上の新車試乗・撮影を行っている。

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